赤マジェ復活ドキュメンタリー
大林一樹。この名前を聞いた時、一番最初に頭に浮かぶことは? Kブレイク、VIP、セダン、本誌の読者なら人気連載企画の『おおもりごはん』も、その一つかもしれない。しかし、それらを退け、真っ先に頭に浮かぶのはきっと、「赤マジェ」だろう。
大林サンの原点。今に至る、その全てはマジェスタから始まった。「マジェスタ」がなければ、今の「大林一樹」はない。そう断言しても構わないほどに重要な存在である。
そして、遂に動き出す。赤マジェ、復活。
今回から、VIPスタイルが「赤マジェ復活ドキュメンタリー」を独占で紹介していく。終わりなき旅の始まり。どんな結末が待っているのか。楽しみで仕方がない。
第一回目の今回は、「赤マジェの復活を決めた真相」をインタビュー。今気になる「3つ」のこと、「復活の真相」「ベース車」「完成予想図」について、率直に答えて頂いた。
赤マジェ復活の理由
これまでに2台の赤マジェを作ったんですが、正直、僕の中で2代目は不本意なカタチで終わってしまったんです。本当はずっと残していくつもりだったんですけど、それも叶わず……。だから、いつか、もう一度作ろうって決めていたんです。そして、次こそは一生もの。ずっと側に置いておける赤マジェを作ろうって思っていたんです。
3代目のベースは約10年前に手に入れました。だけど、当時は会社がしんどい時期だったので、手はつけず、保管しておいたんです。それで2~3年前に、やっとエアサスを入れて。だけど、その先が進まず、また保管していて。
そんな感じだったんですけど、いい加減、50歳になって、赤マジェを作ったとしても、乗れる期間が60歳ぐらいまでだとすると、もう全然時間がないなって。作るのにも時間がめちゃめちゃかかるから、そろそろ本気で動き出さないとダメだなって。それで色々な段取りを始めていって、フェンダーとか、ボディ加工とか、内装とか、そういうのをやって貰える所が決まってきたので、よし、本格的に動こうってなったんです。
Q. 年齢というのが、大きなポイントだったんですね。
だいたい60歳ぐらい、もちろん、乗れるなら、いつまでも乗りますけど。身体のこととか、目のこととか、そういうことを考えると、一旦の区切りは60歳ぐらいなのかなって、何となくですけどね。それで逆算していくと、今始めないと、ヤバイかなって思ったんです。
Q. 後輩たち、そして、仲間の存在も、赤マジェ復活の後押しをしてくれているように感じます。いかがですか?
後輩たちにはずっと、「もう一度、赤マジェを作って欲しい」って言われ続けていて、その度に「やるやる」って言っていたんですけど、他にもやらないといけないことが多くて、どうしても後回しになってしまっていた。
でも、今回、アリストに乗っている堀田という後輩がいて、「カッコ良いクルマを作りたいから見守って欲しい。グロウレッドリーを復活して欲しい。そして、自分もチームに入れて欲しい」って言ってきて。この話は前号の『VIPスタイル』で記事にして貰っているんですけど。
それで、数ヶ月間、堀田のクルマ作りを見てきたんですよ。やっぱり、現場で作っている姿を見ると、僕自身の中で、やりたいっていう欲がわいてきた。俺も赤マジェ、やりたいなって。その後、堀田をグロウレッドリーに正式加入させたんですけど、現状、グロウレッドリーは僕だけなんで、赤マジェが完成しないうちは、堀田がひとりで走ることになる……、そんなことはさせたくないし。
なので、グロウレッドリーの再始動のためにも、赤マジェはどうしても必要だったっていうのもあります。
Q. 仲間の存在も励みになりましたか?
そうですね。赤マジェ復活のきっかけではないですけど、仲間の存在は励みになります。僕がオーナー現役時代、VIPが一番良かった時代に、一緒にやってきた仲間たちが、ここにきて復活したり、またやろうとしていたりしているんですよ。そういうのをSNSとかで知ると嬉しいですよね。20年以上前に一緒にVIPをやってきた仲間。そんな彼らと、今になって、クルマを並べられる時がきたら、それは最高ですよね。
意外にね、昔、VIPをやっていた人たちって、表には出さないけど、その当時のクルマを大切に保管しているケースが多いんですよ。「Kブレイクのイベントの時だけは出すよ」って言ってくれたりもして。だけど、ここ何年も、僕がイベントをできていなくて……。だから、そういう仲間たちのきっかけ作りっていうか、「大林クンが赤マジェやっているなら、また自分もやろう」みたいな感じで、またVIPをやってくれたら嬉しいなって思います。
Q. VIPスタイルも赤マジェ再始動のきっかけの一つ!?
僕の中では危機感はずっとあったんですよ。でも、なくなりはしないだろうって思っていた。VIPは文化になっているから、まさかなくなることはないだろうってね。だけど、今回、VIPスタイルが定期誌ではなくなるってなって、自分の中でショックだった。
最初は凄くショックだったけど、段々と、何とかしてVIPをもう一回、盛り上げたいってなった。そのためにも、今回は赤マジェを絶対にやり切ろうって。同時に、開発を疎かにしていたセダン用エアロもしっかりやろうって。エアロは、ここ数作は小さなパーツが多かったんですけど、逆に時代に逆らってフルバンを作らないとダメだなとか。VIPスタイルの今回の動きは、そんな風に僕の中で燃えるきっかけになっています。
シンプルに考えると、僕がやりたいからってことなんです。その上で、自分らが楽しんでいると、それを見た周りも影響されるっていうのはあると思うんで、そんな風に好循環したらいいなって。結局は自分自身のために作って、自分が乗って楽しんで、その延長線上で、VIPが盛り上がったらいいなって思っています。
街道レーサーの話なんですけど、イベントがあると、途中で合流して、合流してって感じで会場に向かうんですよ。この前、後輩も連れて行ったら、「街道レーサーたちの方は凄いですね、みんなで固まって行って、みんなで楽しんでいて」って。
それを聞いて僕は、VIPも最初の頃って、そんな感じだったんだよなって思って。どこどこのパーキングで待ち合わせして、そこで合流して、みんなで会場に向かって。みんなで走って行くのが凄く楽しかった。だから、赤マジェが復活して、イベントに行くってなった時は、そんな感じで、みんなでイベントに行って、みんなで並べて、みんなでワイワイしゃべって。僕らの楽しかった頃のVIPの雰囲気を再現してみたいなって思っています。
Q. 赤マジェ復活、ホンネの復活理由は?
こんな風に、いざ、赤マジェの復活の理由を聞かれると、一つじゃないんで、色んな答えが出てくるんですけど。それら全部が本当に思っていることなんですけど、僕のホンネの部分はめっちゃシンプルで、自分が楽しみたいから。それに尽きます。人のためにとか、おこがましい。
赤マジェ作って楽しんで、その結果として、VIP業界が盛り上がってくれたら嬉しい。けど、まずは自分自身がワクワクしたいから。それが赤マジェを復活させる、一番の理由です。
大林一樹流ベース車選び
14マジェスタの最終後期で、年式は平成6年です。ボディカラーは普通の白、パールです。これはV8ですけど、グレードとか、そんなモンはどうでもいいんです(笑)。とにかく、こだわったのは程度の良さ。これめちゃめちゃ内装がキレイなんですよ。購入当時は走行距離が8000キロだったし。でも結局、内装も全部張り替えるから、それも関係ないんですけど、でも、ちょっともったいないかなって思ったりもします。ちなみに、現状の走行距離は1万キロです。
僕、もう一台、マジェスタを持っているんです。本当は最初、そっちをベースにしようと思っていたんです。ですけど、ちょっと気になる部分があって、でも、それも走行距離は2万キロぐらいですよ。
Q. 調子はどうですか?
エンジンや電気系統の具合は全然いいんですけど、なんかね、2台ともブレーキが不調なんですよ。ブレーキオイルが漏れていて、ちゃんと直さないと危ない感じなんですけど。まだしっかり見ていないんですけど、フルードが減っているんで、漏れているのかなって感じなんですけど。2台とも同じ症状なので、14マジェスタの弱点なのかな。しかも、純正部品が出ないのがネックで、修理は何かのヤツを加工してやらないとダメで……。
シートもちょっとだけおかしいんですけど、動きがちょっと。でも、あくまでも予定なんですけど、社外のシートに入れ換えるつもりなんで、そこは大丈夫かなって思っています。
あと一つ、問題が出てきていて、アーム類がないらしいんですよ。足まわりやるのにアームが必要になってくるんですけど、純正も社外もない。結局、社外も純正加工品が多いので、大元の純正がないってなると、おのずと社外もないって感じなんですけど。なので、やるとなるとワンオフ。だから、今後、足まわりを煮詰めて行く際にちょっと苦労しそうな予感がしています。
Q. 改めて、ベース車を選ぶ時、特にこだわった部分は?
強いて言うなら距離数ですね。それぐらい。ホンマはサンルーフとかにこわだっても良かったんですけど、サンルーフ付きはね、なかなか出て来ないんですよ。なので、今持っている2台のマジェスタはサンルーフ無しですね。初代のマジェはサンルーフ有りで、2代目は無くて、移植してつけたんですけど。3代目は、ホンネでいうとサンルーフは欲しかったですね。
Q. ベース車を手に入れたのは、約10年目?
そうですね。正確には思い出せないんですけど、10年経ったか、経ってないかぐらいです。実はね、マジェスタ貯金もしていたんですよ。マジェスタをしようと思うと、外装・内装って全部すると、結構凄いことになりますから。だから、一応、マジェスタ貯金をして、ずっと貯めていたんです。けど、それは不景気と共に全部なくなっちゃいましたけど(笑)。やっぱりね、自分のクルマなんで、自分のお金でやらないとね。
Q. 屋根付きの倉庫で、大切に保管していたんですよね?
そうですね。けど、やっぱり、経年劣化が出てきてますね。もうモールも出て来ないんですよ。だから、塗装する時はガラスを外してやってたんですけど、あと、ガラスも新品にしたいんですけど、今回はモールのせいでガラスが外せないかもしれない。モール自体もくすみが気になるし、そういうのをどうするかなって、今の悩み所です。昔は純正部品があったんで、気になる部分は新品に交換できたんですけど。今はパーツがないから……。
例えば、ヘッドライトも曇りが気になっているんですけど、極力、LEDでなんやかんやっていうのはしたくないんですよ。純正の雰囲気を残したいんで。だけど、キレイさっていうのは、やっぱり、新品には敵わない。だから、今、僕が欲しいのは14マジェスタ純正の新品パーツ。トヨタにないってなると、次に頼るのはネットオークション。これからは、ネットオークションとかで、新品パーツ探しをどんどんしていかないとなって思っています。
Q. ちなみに、もう一台のマジェスタはどうするんですか?
3代目に不具合が出た時のために、部品取りもできるし、だけど、あのマジェスタもいいベースなので、金銭的に余裕ができたら、ノーマルフェンダー仕様で乗れるようにしたいなって思っています。
完成予想図
Q. 大林サンはサプライズ好きとしても有名。みんなを驚かせるのが大好き。ですから、言えること、言えないことがあると思いますが、言える範囲で「完成予想図」を色々と教えてください。
正直、この3代目の赤マジェは新しい技術をそんなに入れたくないんです。今の流行りのイジり方は、そんなにしたくないんですよ。本当に僕が好きなカタチを追求していく感じです。
例えば、フェンダーでいうと、僕は昔からワイドフェンダーが好きで、マジェスタの丸みに合ったフェンダーにするんですけど。キャンバーはそんなにつけるつもりはなくて、ナチュラル+αぐらい。エアロの加工も極力シンプル系。僕らが当時やっていたVIPみたいな感じでやろうと思っているから、別に最新式の何かをするとか、そういうのはやらないです。
2代目の時は、当時、モニターが大流行で、88枚も入れたりしたんですけどね(笑)。それはそれでいいんですけど、どうやねんって気持ちもあって、派手にやり過ぎると長く乗れなくなる。長い目で見ると。そういう部分も考えて、これから先、10年・20年持っていても大丈夫っていうのを考えて作ろうと思っているんです。
だから、コンセプトっていうか、目指していることは、自分たちの時代に作って楽しかった仕様で、それを長く乗れるように作るってことなんです。このマジェスタは、一生、僕の手元に置いておきたいので。
Q. さらに細かい話。前後バンパーはどうしますか?
まだキチッとは決まっていないんですよ。2代目の赤マジェのバンパーがあるので、それをベースに使ってもいいし。あとは、昔のVラグと今のJDMを合体させてもいいし。そんな感じで、今、考えている最中です。頭の中で思い描いている姿は、まだまだ5割にも満たないぐらい。集中し出したら、あーしたい、こーしたいが出てくると思うんで、クルマのカタチを見ながら、こっから煮詰めて行きます。僕は昔から雑誌に書き込むんですよ。俺ならこうするって。また、そういうことをするのかな(笑)。
Q. オーバーフェンダーはマジェスタの丸みに合ったフェンダーにするんですね?
デザインの基本はエボのワイドです。初代はそれをつけたんですけど、二代目もそれをベースに少し逆反りさせながら膨らませた。もちろん、次の3代目もデザインの基本はエボのワイドで、その流れで作ります。
僕はアレがしたい、コレがしたいって感じじゃなくて、一旦、これがカッコイイって思ったら、ずっとそれをしたいと思うタイプなんです。なので、赤マジェはエボのワイド風。フェンダーに関しては、僕の根本はそこなんで、そこは譲れない。
もちろん、14マジェでくっきりフェンダーをやっているクルマもカッコイイと思いますよ。だけど、僕はエボのワイドを初めて『ヤングオート』で見た時に、衝撃が走ったぐらいカッコイイって思った。その思いは今も変わらないんですよね。
Q. ホイールと足まわりはどうしますか?
ホイールは気分に応じて色んなのを履かせようと思っています。今はファイブスタを履かせていますけど。オーバーフェンダーをやるんで、サイズが限られるんですよね。とりあえずはファイブスタで、他に、もし気に入ったのが出てきたら、リバレルして作るかもしれないですけどね。
ファイブスタは思い入れが深いホイールです。僕にとって初めての3ピースホイールですからね。だけど、今思うと、もっとああしたら良かったとか、こうしたら良かったっていうのは、やっぱり、ありますよ。ファイブスタだけでなく、何でもですけどね。それはデザインにしても、サイズにしても。でも、あの時のベストを尽くしたことにかわりはないですけどね。
次の赤マジェに履かせるサイズに関しては、19インチで行こうと思っているんです。前回は18インチでしたけど。18インチでもいいんですけど、18インチだと、少しタイヤがゴツくなるんですよ。そういうことを考えると、19インチかなって。
足まわりに関しては、約2年ぐらい前にイデアルのエアサスを装着しました。それまではずっと車高調でしたけど、もう歳だし、運転中に避けるのも嫌だし(笑)、バンパーを壊したくないですし。最近のエアサス、特にイデアルのエアサスは良くて気に入っているんですけど、乗り心地もいいし、フワフワもしないし、この仕様ではエアサスが必須かなって思っています。まずはエアサス。次にアーム類を組んで、足をビシッとキメてから、フェンダー加工に挑戦していきます。
Q. 内装はどんなデザイン?
内装は、外装が完成後、次のステップとしてやっていきます。細かいデザインはまだ未定ですけど、お願いするショップは決まりました。初代の赤マジェも、2代目の赤マジェもやってくれたギャラップです。
クルマ作りは人と人の信頼関係も凄く大事。ギャラップは大林クンのやからって、強い気持ちを持ってやってくれて、そういうのが凄くありがたいなって思います。
Q. ボディカラーは「赤」で決定だと思いますが、その上で、どんな赤にするかっていうのも決めていますか?
ボディカラーは赤なのは、もちろん、決定。だけど、その先でどうするかっていうのは、まだ未定なんです。キャンディレッドもいいし、マツダやレクサスの配合を変えてやるのもいいと思うし。赤マジェって名乗るからには、色には強くこだわるつもりです。
総 括
Q. 改めて、今回の復活に向けて14マジェスタを見つめ直してみて、どんな風に思いましたか?
どこを見ても、懐かしい思い出があるんですよ。人生の中で一番長く乗ってきたクルマなんで。初代の赤マジェは5000キロぐらいで買って、最後は18万キロぐらいまで乗ったし。僕の青春時代は本当にマジェスタと共にあったって感じ。今のクルマと比べると、装備面では物足りない部分も多いんですけど、それでもなお、愛おしいというか。
悪い意味で、今の僕には青春時代のような情熱は、もうない。けれども、この50歳という年齢になって、その当時の気持ちを思い出しながらイチから作るっていうのは、僕にとっても初めてのことなんで、どんな風になるんだろうって凄く楽しみなんです。
Q. クルマって完成した時よりも、あーでもない、こーでもないと構想を練っている時の方が楽しいって、よく言われていますが、今の大林サンはその段階ですか?
まだ、そこまで来てないですね。フェンダーをイジり出したぐらいになると、そんな風にテンションが上がってくると思います。だから、今の時点ではまだまだ(笑)。
Q. 大林サンの場合はみんなからの期待値が半端じゃないので、プレッシャーに感じていますか?
確かにそれはあって、嫌なんですけど(笑)。3代目の赤マジェは、普通にしか作らないですよ。昔は当時の最先端の技術を放り込んで、みんながおぉ!っていうのを作りましたけど。だけど、そうは言っても一つだけ約束できるのは、見てくれた人が、大林クンらしいなって思うクルマであること。間違いなく、それはそうしていきたいなって思っています。
自分がカッコイイって思うカタチをやるだけ。他人の評価は気にならないっていうと、それは嘘になるけど、そこまでは気にしない。完成して、嫌な部分が出てきたら、そこをやり直せばいいしね。一生、乗るんだから。長い目でやっていきたいですね。
次回の、この連載コーナーでは、さらに一歩進んだ所をみんなに見せられたらいいなって思っています。50歳になって作る3代目のマジェスタ。気持ちを若返らせながら、楽しく作っていきます。ぜひ、楽しみにしていてください。
Legendary Red Majesta:伝説の赤マジェ
大林サンの「赤マジェ」は初代・二代目で、通算6度の表紙を獲得している。1回目はVIPカ-、2回目はチャンプロード、3回目はVIPクラブ、4回目はヤングオート。そして、2代目でVIPスタイルとVIPカーで表紙を獲得。3代目の赤マジェはどんな姿に仕上がるのか。楽しみである。